ぬうぱんの備忘録

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Fluity ConvolverのLinear phase EQについて

問題

 Fluirty Convolverにはプリセットとして

  • Linear phase EQ(long latency)
  • Linear phase EQ(short latency)

が用意されていて、これによって線形位相フィルタが提供されています。で、これlatencyの文字が見えてるところから想像がつくかと思うのですが、レイテンシが発生します。するんですが、PDC(plugin delay compesation:プラグイン遅延補正)では遅延が発生しないことにされています。なんでだろう? って思ったので調べてみた。

プラグイン自体には遅延がない

 調べてみるとILのフォーラムにこんなトピックが。

Convolver (EQ): Latency vs. PDC
http://forum.image-line.com/viewtopic.php?p=715353
(フォーラムにログインしないと見れません)

 どうやら、Convolver自体には遅延が存在しなくて、遅延が発生するとすればそれは読み込んでいるインパルス応答(IR)ファイルに含まれているからだそうです。

IRをこねこね

 実際、プリセットで使われいるIRを見てみると、確かにインパルスが一つぽつんとあって、インパルスの前に空白がある。つまり、フィードバックのない純粋なディレイってことですね。
 セッティングはDry0%,Wet100%なので、ディレイのWet音がConvolverから聞こえてくるわけです。

 ということは、遅延のないIRを作ってConvolverに読ませてEQすればいんじゃね? ってことで実際にやってみると、EQの効きが恐ろしく悪くてびっくり。任意周波数以上をバッサリカットするようなハイパスフィルタの設定にしても全然切れてない。
 つまり、インパルスの前後にある空白がEQの効きに影響を与えてるってことですか。窓関数とかの話になるんでしょうか? ちょっと信号処理は全然わからんです。

なんでIRのディレイを報告しないのか

 Convolverはもともと畳み込みリバーブプラグインです。なので、IRの先頭に無音があってもそれはリーバブの一部(プリディレイ)として考えるべきです。なので、IRを解析して先頭の無音をプラグインディレイとして報告するのはConvolverのそもそもの目的からすると変な動作ということになります。
 たぶん、ここらへんが遅延のないプラグインとして振る舞う理由でしょう。

代替案とか

 さて、ConvolverのEQプリセットがPDCを報告しないけど遅延が発生する状況はConvolverの畳込みリバーブプラグインという性質上しょうがないことがわかりましたが、さてどうしましょう?
 ConvolverPDCを報告しないのなら"PDCを報告はするけど実際は遅れてない"つまり位相を進めるプラグインを導入して、Convolverが遅れる分はや回せばいいのでしょうが、そういうプラグインは少なくともFLにはありません。
 一応、次の手順で調整は出来るみたいです

  • Fluity LimitterのAtackをConvolverと同じ遅延時間に設定
  • PDC(Ctrl-P)をかける
  • LimitterのAttackを0に戻す
  • PDCしないでおく

 が、この方法PDCしたら一貫の終わりです。
 ということで、結局は

 が一番無難なようです。

結論

まとめると

  • Convolverプラグインディレイを報告しないし実際そんなものは無い。
  • EQプリセットの音が遅れるのはディレイのあるIRのwetのみを出力しているから。
  • だからといってディレイのないIRを作ってそれでEQしても全然使えない。
  • 素直にEdisonのEQ使え

といったところでしょうか。

余談

 遅延云々とは関係ないので余談。
 不要なウルトラローをカットする用途に使うんならFluity EQ 2のハイパスフィルタでTypeをSteep8(一番急な奴)にしてしまうので問題無いかも知れません。ものすごくバッサリ切ってくれます。
 ただ位相がどうなるのかは調べてないので可能ならEdisonのEQツールを使ったほうがいいっぽいです。